常識は疑え

公の面前で大げさに吐露することにしました。

〜そして原子力は日本を覆った〜映像の世紀風

土曜日、家でゴロゴロしながらTVを見ていたところ、気になるCMが流れてきました。

電気事業連合会(以下電事連)のもので、俳優の石坂浩二が、日本のエネルギー自給率の低さを訴え、それを解決するためには原発を組み込むことが重要です。

という内容のものでした。

この内容のCMは震災前にはよく流れていました。

東電では考古学者の吉村教授や草野仁関西電力では今は亡き星野仙一氏。原発に使ったウランから出る高レベル放射性廃棄物のCMでは渡瀬恒彦岡江久美子と言った具合です。

大御所、エリート、知的と言った芸能人が国策という大義名分の元、豊富な宣伝費からギャラをもらい、原発は必要という意識を視聴者に植え付けようとしている。

 震災から8年が経過し、国民の原発への意識はもう薄れたのかと私は感じました。

そしてそもそも、原爆の唯一の被害国だった日本がなぜ戦後20年少々で福島で原発の商用運転を開始できたのかという事に疑問を持ち、調べてみました。

 そこでわかったのが、一人の野望を持った男でした。

彼の名は【正力松太郎

聞いたことがある方も多いかもしれません。何故なら、彼はプロ野球の父と呼ばれ、読売巨人軍を創設した人だからです。

そして、5万部の売り上げに過ぎなかった読売新聞を日本一の新聞社に押し上げた新聞王であり、日本初の民放テレビ局である日本テレビ創始者でもありました。その為、テレビの父という風に呼ばれることもあります。

 そして何より彼は政治に大きな影響力をもたらしたいが為、アメリカのアイゼンハワー大統領が唱えた原子力の平和利用(atoms for piece,レディオヘッドトム・ヨークのサイドプロジェクトの名前としても知られています。)を推進する為、日本テレビや読売新聞を使って世論を原発支持にまとめあげ、自らは衆議院選挙に出馬、当選し、初代原子力委員長、科学技術庁長官などの原子力に関連する職につき、総理大臣を狙いに行きましたが、その夢は果たされることなく、亡くなります。

 そして、正力松太郎アメリ諜報機関CIAの協力者でもあったそうです。彼は反共産主義者であり、日本をエネルギー不足から救うことが共産主義から日本を守ると考えていたそうです。

そしてアメリカとしても敗戦後、自らのしもべとして育ててきた日本を共産圏に取られることはあってはいけないことで、(冷戦だった当時は現在より共産党が力を持っており、第五福竜丸の被曝事故などもあり、反米、反核デモが相次いでいた。)

そこで正力は読売新聞に原子力を賞賛する記事を連載し、アメリカの原子力平和利用使節団(ホプキンス・ミッション)を1955年、日本に呼び寄せます。

 そこで原子力平和利用博覧会を開催し、多くの国民を原子力エネルギーの積極的利用に賛成させる事に成功します。

(ちなみに読売新聞の社説は現在でも原発稼働には賛成です。)

そして満を持して衆院選に当選した正力は、日米原子力協定を結ばせ、原子力三法(原子力基本法原子力委員会設置法、総理府設置法)を可決させ、初代原子力委員長となって、産業界、学者たちを原発賛成にまとめあげ、(正力の懐刀だった柴田秀利は学者の名簿に印を付け、共産系学者を区別していた。)

そして1963年10月、ついに日本初の原発が誕生した。

 そこから4年後の1967年に福島第一は着工し、1971年3月に営業運転を開始しました。

田中角栄が総理大臣になったあとは、電源3法を成立させ、原発を誘致した自治体には莫大な交付金を与えて次々に原発を作り、冒頭のようにメディアを利用して原発は安全でクリーンと信じ込ませ、日本中に50基も建造するに至りました。

しかし2011年、3月11日を境に日本の原発安全神話は崩壊し、その後一時は日本の原発が全て停止してしまいます。

 しかし、その後政権が民主党から自民党に移ったことをきっかけに、停止していた原発は再稼働への道を歩んでいます。2015年にはついに鹿児島の川内原発が再稼働しました。

 そして冒頭のようなCMがお茶の間に流れ始めます。

さて、原発が日本に建てられた理由はアメリカの推進や正力の野望であるということが分かりましたが、問題はこの後日本はどういう風に原発と付き合っていくのかです。

私は、現状稼働するのはやむを得ないが、早めに停止させる必要があると思っています。

1つ目は、政治的な構図が大きく変わりました。冷戦が終わり、日本は世界第一線の技術大国になっているので、(増してやアメリカはスリーマイル原発メルトダウン以降原発の新規建設を行っていない)周りの国の顔色を伺う必要が無くなりつつあるということです。

 2つ目に、太陽光、風力などの再生可能エネルギーが主電源として歩める可能性が大きいということです。エネルギーコストの低下、発電効率の向上で伸びしろがあるだけではなく、いくつかの先進国では、最も電気を作っている方法となっているのです。

助成金太陽光発電所を作るのがブームになりましたが、これをブームで終わらせない努力が今後必要となってきます。

 そして3つ目が

ブラック・スワン』に備えられるかの疑問

ブラック・スワンとはイスラエルの学者ナシーム・ニコラス・タレブ教授が書いた世界的ベストセラーで、予測できず、非常に強い衝撃を与える出来事で、一旦発生すると後付けの説明がでっち上げられてしまう事である。

46億年の歴史を持つ地球の中で近代文明は数百年程度しか生きておらず、今後どんな災害が起こるのかを予測しきれていない中で、目に見えず一気に広がり、簡単に生物を死に至らしめるものを使えるのか。そしてそのリスクを覆ってまで原子力に頼る価値があるのかというのが素朴かつ最大の疑問なのです。

 次に出す例は災害とは違いますが、原発でウランを投入した後に発生する高レベル放射性廃棄物は、青森県六ヶ所村の地下300mに埋められていて、将来的にも地層処分をする方向で話が進んでいるのですが、

高レベル放射性廃棄物が危険では無くなる100万年後には地層が隆起して1000m近い山を形成するという話があります。40年の安全を担保することが出来なかったのに100万年の安全を良く担保するという話です。

現時点でさえ多くの高レベル放射性廃棄物がすでに廃棄されています。リスクを考えた場合、もう増やすべきでは無いと感じます。

 更にこの話に付随する形で、ウランを燃やした後に高レベル放射線廃棄物と共に生み出されるのがかの悪名高きプルトニウムであり、日本は発電後に発生したプルトニウムを45t使用していると言われています。

プルトニウムはウランと比較すると非常に不安定な物質であるために危険があります。

ニュースで聞き馴染みのある言葉で、高速増殖炉という言葉がありますが、その高速増殖炉プルトニウムを投入して発電させ、更にプルトニウムをまた取り出すことができるという燃料サイクル的には素晴らしい装置なのですが、日本で実験炉として稼働した『もんじゅ』は約20年の期間で、トラブルが続き廃炉となり、商用運転は事実上頓挫した状態です。つまり、プルトニウムは増え続けて、それを持ち続けるということです。

正力松太郎は、プルトニウムが発電後発生することを見越して、それを元に核武装も考えていた。という説すらあります。都市伝説くらいに考えておくのが良いと思います。)

それでも電力会社はプルトニウムを持ち続けてはまずいので、既存のウランにプルトニウムを混ぜて発電するプルサーマル発電を実施しています。

 これはウランを燃やすために設計された原発が安全マージンを削って発電することを意味しているとも言われております。

 

一方、原発が簡単にやめられるものでは無いと電力会社は感じているはずです。その理由は何かと言えば、

廃炉にするのが大変

何十年もの時間がかかる上、1基あたり費用が500億程度かかり、福島のように事故にあった発電所は1兆を優に超える金額がかかります。50基以上の原発を廃炉にするためには莫大なコストと労働力、そして時間が発生してしまうのです。

プルトニウムの処理

プルトニウムを利用できなければ、この核爆弾の原料という危険物質を意味もなく持ち続けることになってしまいます。

 


③時代に応じて立ち回る必要性

偶然見た石坂浩二原発賛成CMから、日本の原子力政策の成り立ちと今後を考察したわけですが、政府はじめ決定機関は組織のがんじがらめの中におり、今動いているものを止めて労力を使って立ち向かって行くことを選択できないだろうなぁと思います。

私は小泉さんが後7年早く(首相の時)原発NOを言い出していたら事態は変わっていたと思うのですが。。

今後原子力政策に真っ向から立ち向かえるのは外務大臣として評価を上げている河野太郎氏なのかなぁと思います。

しかし、電事連は激しく抵抗するでしょう。読売新聞も反対するでしょう。官僚は頭を抱えるでしょう。その時世論は原子力の成り立ちを知っているのでしょうか?核燃料サイクルが何かを知っているのでしょうか。。