常識は疑え

公の面前で大げさに吐露することにしました。

流れる季節、流れるリアタイヤ

MOTO GPの話題でも。

今シーズンはヨーロッパ圏内で開催が制限されたり、ロッシをはじめとした有力ライダーが欠場を余儀なくされるなど、暗い話題も多い中、明るい材料としては中上選手の躍進です。

ポールポジションを獲得した前戦のテルエルまでは毎戦トップ10フィニッシュをするなど、大きく躍進を遂げました。マルク・マルケスしか乗りこなせなかった2019年型のRC213Vを見事に乗りこなしています。搭載エンジンやエアロダイナミクスの違いによって、最高速では、他のホンダ機やドゥカティ勢に遅れを取る中、この成績は見事です。

その努力が報われ、翌年以降の複数年契約と最新のRC213Vを勝ち取ることができました。

前戦のテルエルGPでは、金曜〜日曜の午前中を型落ちのマシンながら、支配的な速さを見せつけ、ポールポジションを獲得しましたが、決勝ではグリッド前方に誰もいない不慣れな状況に画面越しにも力んでいるのが伝わり、1周もできずにリタイヤとなってしまいました。リタイヤ後は、本人も相当落ち込んでいたようですが、舞台をバレンシアに移した今回のヨーロッパGPでは、ウェットからドライへと変わる大変難しいコンディションながら、再び予選でフロントローに並びました。

過去、最後に日本人が表彰台に登ったのは、このバレンシアサーキットでベン・スピーズの代役として参戦した中須賀克行が、ウェットで多くのライダーが転倒する中、確実に順位を上げて2位フィニッシュをした2012年に遡ります。

今回も金、土でコンディションがずっとウェットで、日曜日にいきなりドライとなりそうな難しいコンディションとなりそうですが、中上選手もデビューイヤー時、バレンシア悪天候の中、この年最上位の6位フィニッシュをした縁起の良い場所なので、是非とも表彰台をと、期待してしまいます。

 

今回の舞台となる、バレンシアサーキットは、MOTO GPバイクにとって、スロットルを開けていくかいかないかの、絶妙なコーナーがあります。

かつてこのコーナーを支配的なスピードで駆け抜けて行ったのが、RC212Vを駆る、ケーシー・ストーナーでした。

ストーナーは、バレンティーノ・ロッシが勝利出来なかったドゥカティ機で勝利を続けたライダーであり、その乗り方は天才的なものでした。ストーナーの天才的な乗り方は、バレンシアのコーナーを、タイヤがグリップを失う直前まで滑らせて、ドリフトして立ち上がっていくという、リスキーかつ豪快なものでした

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一般的にタイヤというものは、滑りはじめが一番グリップする美味しいところだと言われていますが、その一歩先を踏んでしまった場合はあっという間にハイサイドとなり、軽く見積もっても大怪我です。破綻するかしないかを綱渡りのように綺麗にドリフトしながらレコードラインを走るストーナーは、とんでもないライダーでした。

豪快な走りをする一方、メディア嫌いで家族を大切にし、全盛期の27歳で引退を決めてしまう、少しひ弱な感じも、彼の天才性を際立たせていました。

そんなストーナーが引退した後に、ホンダへやってきたのが、マルク・マルケスです。

肘を擦ることを当たり前にしたマルケスの走り、強さに、人々は改めて驚愕するのですが、マルケスがやってくる前に支配的な走りをしたストーナーマルケス、どちらが速いのかとストーナーの引退後8年経過した今でも、その対決を見たかったと願う人は多いのです。